Interview

Interview 001: Opeik

Interview 001: Opeik

Rapper(from 胎動LABEL)

Excess Recordings JP記念すべき第一回目のインタビューとして、輪入道を客演に迎えた楽曲『陽炎』のミュージックビデオが記憶に新しいラッパーRIN a.k.a. 貫井りらんなどを擁する胎動LABELより、2017年10月にファーストEP『Blue Apple』をリリースしたばかりのラッパーOpeik(オペイク)をフィーチャー。
僕にとっては2016年夏、立川のクラブA.A.Companyでのビートライブの際にPickup Liveとして彼を観たのがアーティストOpeikの音楽性との初対峙だった。そして、そこで初めて聴いた彼の一曲『TIME UP』に僕は一瞬でやられてしまったのだ。
このインタビューで彼を初めて知る方もいることだろうと思うので、インタビューに先立ってこの名曲から彼に触れていただきたい。

いかがだろうか。Opeikの音楽に触れたところで早速インタビューに移りたい。

Interview

Interviewer: Lunniebeats from Excess Recordings

(途中に差し込んでいる画像は全て『Blue Apple』のミュージックビデオからの抜粋です。)

1. ここまでの自身について


――― Opeikさん、この度はEP『Blue Apple』リリースおめでとうございます。インタビューに先立ってまずはOpeikさん自身についてお伺いしたいと思います。ラッパーとしての活動歴など基本的なプロフィールについて教えていただけますか?

はい。ラップを始めたのは2004年ぐらいで、高校時代に童子-Tの『少年A』とかにハマってからすぐに自分でも始めました。当時はネットでもフリースタイルの動画とかがちょっとずつ流行ってきてて、とりあえずフリスタしつつたまに曲作りしてた感じですね。

――― なるほど。若者がとりあえずフリスタやるのは昔も今も変わりませんね。(笑) ぼくが初めてお会いしたのもクラブでしたけど、結構昔から現場でのライブ等もされていたんでしょうか。

当時はSNSのmixi(ミクシィ)がめちゃくちゃ流行ってて、そこでつながったラッパーと組んで現場でライブしてました。今じゃ考えられないですけどあの当時はみんなmixi使ってて、ヒップホップ好きと繋がったり曲作りしたりとか結構盛んでしたね。

――― やっぱりどこもmixiなんですね。本当に流行ってましたからね。BIOGRAPHYを見るとアメリカに行かれたのは高校時代の辺りだと思いますが、これは活動されてみて何か心境の変化などがあったのでしょうか。

実際のところ高校生活にダレちゃったりしてて、このまま続けてても仕方ないかなみたいなところもあったんですよね。そんな時にアメリカでラップやってる先輩から「こっち来なよ」みたいな感じで誘ってもらったんです。それで高校辞めてニューヨークのマンハッタンあたりに住み始めて。

――― おー!それはさぞかし影響を受けたんじゃないですか?

いや、それがそうでもなくて。(笑)実は当時あんまり洋楽を聴いてなかった関係で、いざNYに住んだのはいいもののアメリカのヒップホップの精神性にそれほど共感できなかったというか。日本語ラップに関しては割とがっつりヘッズだったので「やっぱ日本語の方がかっこいいな」って再認識した結果2ヶ月ぐらいで帰ってきちゃって。(笑)

――― えー!それもすごい話ですね。(笑)

なので向こうでがっつりライブやったとか、現地のラッパーと曲作ったとかそういうのは特にないんです。でも海外に住むっていう経験自体は自分の中ではやっぱり大きかったですね。外に出て日本語の良さがわかったりもしましたし。

――― 違う文化に触れるからこそ普段の生活を客観視できたりするものですもんね。さて、日本に帰ってこられてからはどういう生活だったんでしょうか?噂では色々やられていたと聞いていますが...

日本に帰ってきてしばらくは、音楽活動としては特筆すべきことはそんなにやっていないんです。ただ、「日本語を追求したい!」っていう思いからライターとして活動してみたり、さらにはカメラマンに挑戦してみたり、音楽に限らず幅広い表現方法にチャレンジすることで自分なりのアートフォームの模索を続けていました。模索が昂じて一時は小説家になろうかとも思っていたぐらいで。

――― それでピンと来ました。楽曲『TIME UP』のリリックには「雨」などを使った描写が節々に出てきますけど、雨を使ったリリックってかなりあるじゃないですか。そんな中で、あの曲のラインを聴いても意外と陳腐さがないなと思っていたんです。ヒップホップはストレートなものが多い一方で、文章として作り込まれたものにはあまり触れてこなかったのですごく印象に残っていました。

ありがとうございます。でもそうやって力を入れてきた模索が段々激しくなってきたところで、今度は逆に音楽の方が「このまま漠然とライブやってても仕方ないんじゃないか?」っていう心境になってきたんです。何より自分の音源に自信がなくなってきちゃって。それで模索をしっかり続けつつ、音楽は音源制作に専念しようということでライブ活動は一旦休止しました。

2. 活動再開と、胎動との出会い

――― ライブを休止されてから、空白が4年ほど続いていますね。再開のきっかけ等はあるのでしょうか?

そうですね。ブランクは長くなってしまったんですが、再開したきっかけはやはり「音源に自信が出てきたから」というところですね。音源は作っていましたし、クラブにも客演とかでは時々出ていたんです。でもさすがに休みすぎてライブも全然選択肢がなくなってしまっていて。色々なイベントでデモを渡しつつライブさせてもらっていたところ、たまたま司会をされていikomaさん(註: 現在はイベント"胎動"やレーベル運営、ポエトリーイベントなどを主宰し幅広く活動)に出会ったんです。仲良くなる中でレーベル設立の話になり誘っていただいた形ですね。当時はc-hという名前で活動していたんですが、ikomaさんとも話しているなかで「とりあえずこの名前フライヤー映えしないよね」と。(笑)それで、加入を機に名前を変えようということになったんです。

――― そういう経緯だったんですね。僕自身がOpeikさんを知るきっかけになったイベントTAKEOVERのフライヤーデザインは実は僕がやらせてもらったんですが、名前もあって調べてもなかなか情報が出てこない。(笑)だから当日お会いするまで「この人はどういう人なんだろう?」ってずっと思っていました。


(当時制作したフライヤー)

やっぱりそうですよね。(笑)ネットにも音源はあげていなかったので、当時は情報もほとんどなかったんじゃないかな。そこで解明することになってからは、自分らしい名前であることを前提として、ストリート感が出すぎず現代っぽい言葉を探していたんです。ikomaさんと100個ぐらい案を出し合ったんですが、本当に全然ピンと来るものがなくて。

――― 結局どうされたんですか?

実は当時よく連絡を取り合っていた女性にも何か案がないかあたってみたんです。その時に"opaque"っていう単語を提案されて。これは形容詞で"不透明な"とかっていう意味なんですけど、それを聞いた時に「俺らしいな」って感じがしたんです。そこで、もじって"Opeik"と名乗るようになりました。ただ、その女性とはもう一切関係が途切れちゃって。(笑)でも実はEpisod 4はその子のことを歌っている曲なんです。

――― なんと!

(笑)それからは『TIME UP』のミュージックビデオも制作して、今回はEPも出させてもらったりと精力的に活動してきました。

3. EP『Blue Apple』について

――― なるほど。では楽曲の話になったので、ここでやっと、今回リリースされた『Blue Apple』に関連して、作品・ビート・リリックなどについてのお話を伺いたいと思います。ついつい話が長くなってしまってすみません。

――― 本作は全体を通してOpeikさんの内面が強くにじみ出ているように感じました。このEPはOpeikさんの活動の中でどういった位置付けなのかといったところで、EPのコンセプトについて教えていただけますか?

実はコンセプトは全くなくて。(笑)というよりむしろ「なるべくコンセプトを固めない」ことを意識して作ったぐらいです。

――― そうだったんですね。EPを通してリリックからご自身への"内省性"みたいなものが感じ取れていたので、そういったコンセプトがあるのかと思っていました。

内省的なリリックに関してはこのEPに限ったものではなくて、基本的に僕の曲は自分と向き合ってるものが多いんです。言っちゃえば「自分の心と真正面に向き合って自分の心を探る旅」みたいな感じで、自分が物事についてどう思っていたか、リリックを書いて改めて気づかされる部分っていうのも多いんです。

――― なるほど。そういった形でリリックを書き上げて、2曲目Episod 4では綺麗でゆっくりした曲調に、リズミカルながら確実に言葉を乗せていくラップがとても印象的でした。さらに3曲目Long Nightは太いシンセにドラムが絡みつく印象的なビートの上で、小節の空白をうまく活かしたラップがかっこいい1曲でした。リリックの深さに反してというか、基本的にはラップのフロウとかビートへのアプローチはすごく今風だなと思うんですが、こういったスタイルに落ち着いたのはどういった影響なんでしょうか。

基本的には新しいものが好きなので、ラップのスタイルとしてはやっぱり最新のトラップが好きですね。アメリカにいた当時はほとんど聴いていなかった最新のUSのヒップホップも今ではかなり追うようになって、最近だとLil Uzi Vertとか、韓国勢ラッパー、XXXTentacion、Post Maloneとかをよく聴いています。

――― うわ、ばっちり追ってますね!リリックがリリックだけにビックリしました。

ただ、ラップのスタイルに関してはトラックメイカーで『TIME UP』のビートもいただいたZack-Eさんの影響が大きいんです。今Zack-Eさんにはレコーディングエンジニアをお願いしているんですが、リズムのつけ方や音楽的な部分などは相当教えてもらいました。

――― プロデューサーのディレクションって実は結構大きいんですよね。

本当にそうですね。KOHHさんには318さん、YENTOWNならChaki Zuluさん、とか。人気があるところでは後ろから強力なバックアップがついてることって多いんですよね。ぼくの場合でも、どうすれば聞こえがいいのか、メロディにせよリズムにせよ音楽的な心地よさの追求っていう部分はプロデュースでかなり成長させてもらったと思っています。レコーディングも実際5日間とかかけて録り直したりするんですよ。やってる時は苦しいですけど、完成したらやっぱり楽しいですね。

――― それは間違いないですね。ここでプロデュースの話になりましたが、今作に関してはトラックメイカーのsorabeatsさんとの共作だそうですね。正直な感想としてこのEPのビートの振り幅はかなりすごいと思っています。たとえば4曲目Show Windowでは4つ打ちのビートにギターも乗りつつ、さらに時々BPMが半分になったり倍速になったりしながら展開を作っていくので、ラップを乗せるビートとしてはだいぶ面白いです。しかし一方で僕自身もビートメイカーなので「ラッパーさんにこのビートを突然渡す勇気はないかな...」とも思ってしまいました。どうしてあのビートを選ばれたんですか?

(笑)Sorabeatsはもちろん普通のHIP-HOPビートも作るんですよ。ただお互いエレクトロとかも好きだったりして、僕が変則的なものばっかり欲しがってたんです。そうしたら「まあOpeikだからいっか」的な感じである意味やばいビートばかりが送られてくるようになって。(笑)

――― エレクトロあたりもお好きなんですね。そうやって色々届く中で、ビートの選定に明確な基準はあるんでしょうか?

お互いエレクトロ含め現代的なサウンドが好きなんです。流行とまではいかないけれど新しいものを追っているし。でもその反面で音にどこかエモーショナルさというか、そういうものが感じられないとピンとこないところもある。だから革新さとエモーショナルさのバランスが取れているかどうかですね。特にバンド出身のトラックメイカーだったりすると、トラックメイカー以前に作曲家なので、音圧やコード進行などやっぱり音楽としての骨子がしっかりできているんですよね。するとラップも乗せやすいし、最終的にひとつの音楽としてパッケージングした時の完成度もグッと高まってきます。本当にありがたいです。

4. 胎動LABELについて


――― ではここで所属されている胎動LABELさんについてもお伺いしたいと思います。不勉強で申し訳ないんですが、"胎動"といえば個人的には「マルチカルチュラル(multi-cultural)」というか、いろんな文化を織り交ぜて楽しくやっているところ、という印象が強いです。所属するアーティストとしてはRIN a.k.a 貫井りらんさんのイメージが大きいかな。輪入道さんを客演に招いた『陽炎』や、Meisoさんとの『同じ月』など、豪華な客演陣を招きつつプロデュースはYuto.com™さんが担当し、独自に確立された世界観での楽曲制作が話題ですね。胎動LABELさんの良さや独自性などがあればお願いします。

RINに限らず、胎動はイベントとしても幅広い音楽を扱っているところがまず大きいです。実際ヴィジュアル系やヘヴィメタルなどのバンドと対バンするんですよ。それでこれがまた楽しくて。(笑)そもそも客層とか乗り方とか、ヒップホップにおいて当然とされている前提とか文化なんて共有されていないのが当たり前なんです。だからこそ客観的に自分の立ち位置を把握しやすい。なんかゆるキャラみたいなのまで出てきたりして。(笑)

――― クラブイベントでゆるキャラはやばいですね。(笑)

胎動では、普通に生きていたらまず出会えないような人や事象に出会える。自分の知らないものを知れるという意味では本当に僕に合っていて楽しいんです。

――― 今後の活動としても、継続的に胎動LABELさんからアルバムなどリリースしていくのでしょうか。

そうですね。今後の活動としてはもちろんフルアルバムも作るつもりです。ただ、もっとシングルのリリースをたくさんやりたいとも考えています。これまでEPにせよひとつの作品の制作にぐっと時間をかける方だったのですが、この作品制作の間隔を詰めて、なるべく定期的なリリースを行いたいですね。

――― そんな嬉しい報告が聞けるとは...初めてお会いしたあとにライブが良すぎて音源をめちゃくちゃ探したのでこれは素直に嬉しいです。

ありがとうございます。(笑)

――― あとは最後に告知等あればお願いします。

EPのリリースや胎動6周年などを記念して、10月(註: 2017年10月)にClub Asiaにてリリースパーティを行います。


――― インタビューありがとうございました。

いかがだっただろうか。twitter等でも寡黙で比較的露出の少ない、そういった意味で未だ謎多きラッパーOpeikの音楽性や人間性について少しでも知ってもらえたら幸いである。本企画では今後も勢いに乗っているアーティストについてピックアップして、継続的にインタビューを敢行していく予定だ。

Artist Profile: Opeik

横浜在住のラッパー。 その独創的なフローに、以前から多数の同業者より「ブレイク」の予想が集まっていた。 またフローだけでなく、感情を揺さぶるワードセンス、HIPHOPでは稀の叙情的な世界観を、現代的サウンドで展開するのも特徴。 事業家やライター、被写体活動などの経歴もあり、今後のアクションにも目が離せない。

2004年 RAPの活動を開始する。
2005年 高校を辞めて、当時お世話になっていたラッパーの方を頼りにアメリカへ。
2011年 Live活動を休止。
2015年 Live活動を再開。
2016年 胎動Labelに所属。ラッパー名をc-hからOpeikに変更。
2017年 Digital Album『Blue Apple』リリース。
c_h1215

Title: Blue Apple
Artist: Opeik
Label: 胎動LABEL